■巨額のシステム裁判
127億円もの巨額の損害賠償を求めるシステム裁判を3月4日、日経XTECHが報じました。
[スクープ]127億円の賠償求めるシステム裁判、三菱食品がインテックを訴えた理由
記事によると、食品卸最大手の三菱食品が発注先のインテックをシステム開発の失敗などを理由に提訴。三菱食品は、インテックが負っていたシステムの完成義務やプロジェクトマネジメント義務を怠った債務不履行を主張する一方、インテックは完成義務やプロジェクトマネジメント義務は負っていなかったとして全面的に争う姿勢だと記事は伝えています。
■これまでのシステム裁判
システム開発を巡るトラブルはたびたび裁判に発展します。スルガ銀行が日本IBMを訴えた裁判では日本IBMに約42億円の賠償を命じる判決が2015年、確定しています。
旭川医大がNTT東日本を訴えた裁判では、一審の札幌地裁はNTT東日本に8割の過失責任があるとしましたが、二審の札幌高裁はユーザー側の旭川医大にすべての過失責任があるとする判決を下しました。旭川医大は上告しましたが、最高裁は上告を受理せず二審判決が確定しています。
また、みずほ証券が東京証券取引所を訴えた裁判では、東証に対して約107億円の支払いを命じる判決が確定しています。
■システム開発トラブルを避けるには?
このように巨額の損害賠償事件に発展することがあるシステム開発トラブルですが、ここまで損害賠償額が巨額にならなくても、訴訟に及ぶ事例はあります。開発トラブルは経営リスクを高めます。このようなシステム開発トラブルを避けるためには何が大切でしょうか。システム開発紛争の事件を数多く担当する深澤諭史弁護士に情報労連の機関誌『REPORT』で伺ったお話を紹介したいと思います。
システム開発トラブルはなぜ起きる 紛争予防のポイントは? (『情報労連REPORT』2018年7月号)
この記事の中で、深澤弁護士は、開発トラブルの際の法的な判断基準のポイントとして「ベンダーとユーザーは協力しなければいけない」ことを上げます。
深澤弁護士は、システム開発はソフトウエアという製品の特性上、サービスを求める側と提供する側が互いにコミュニケーションを取って成果物をつくっていくことが特徴であるとし、「ユーザーはベンダーに要望を具体的にきちんと伝え、ベンダー側も、ユーザーの要求を無条件に受け入れるだけではなく、できること・できないことを明確に伝える必要がある」と指摘します。
その上で、ベンダーの紛争予防のポイントとして、ユーザーの要望を無制限に受け入れないことや、ユーザーの要望を固定すること、小さな会社でも最初の段階で契約書を結ぶことなどを上げます。
ベンダーにはユーザーに助言する「プロジェクトマネジメント義務」があります。ベンダーはユーザーの言いなりになるだけではなく、ユーザーの要望についてレビュー、調査、評価をしなければいけません。一方、ユーザーも要望を伝えるだけではなく、開発に協力することが求められます。
■コミュニケーションが大切
深澤弁護士は、「紛争を避けるためのポイントは、一にも二にもコミュニケーションです。コンピューターの仕事であっても、コミュニケーションが最重要課題になるというのが、私がシステム開発紛争の事件を担当して得た実感です」と話します。ユーザー・ベンダーともに、意思疎通を図りながらシステム開発を進めることが大切です。