「罰則付き時間外労働の上限規制」でITエンジニアの長時間労働は是正されるのか? その2「罰則付き時間外労働の上限規制の留意点」

休日労働時間を含めると最大で年間960時間の時間外労働が可能
労働時間

罰則付き時間外労働の上限規制で注意しなければならない点は?

おさらいの意味も込めて、罰則付き時間外労働の上限規制で示された上限時間を見てみましょう。

・限度時間 

 月45時間、年間360時間

・限度時間を超えて労働できる時間

 年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)ただし限度時間を超えて働けるのは年間6回まで

※現行と改正後の違いについては、下図を参照

注意すべきポイントは「休日労働を含むのか、含まないのか」です。

上限規制の単月100時間未満、複数月平均80時間にはわざわざ「(休日労働含む)」と書いているとおり、限度時間の月45時間、年間360時間、年720時間の上限には休日労働が含まれません。

休日労働とは、法定休日に労働することです。法定休日は、毎週少なくとも1回(もしくは4週間に4回)の休日を与えなければならないことを定めていますが、この法定休日の労働時間は、限度時間の月45時間、年間360時間、年720時間の上限にはカウントされないことになります。

つまり、法定休日の労働時間を含めると、限度時間の月45時間、年間360時間、年720時間を超えて労働させることができる、ということですね。

はい。もちろん休日労働時間を含んだ単月100時間未満と複数月平均80時間と限度時間を超える回数の6回は超えることはできませんが、それでも休日労働時間を含めると最大で年間960時間の時間外労働が可能となります。極端な例ですが「1~6月(年回6回まで)を休日労働含んで月80時間、残りの6ヵ月を上限規制の月80時間」でイメージ(下図)を作成してみました。


「1~6月(年回6回まで)を休日労働含んで月80時間、残りの6ヵ月を上限規制の月80時間」のイメージ

つまり一年を通じて、過労死ラインと同等の毎月80時間の時間外労働ができてしまうということですか?

そのとおりです。月80時間の時間外労働は、過労死ライン(発症前2~6ヵ月にわたる、1か月当たりの時間外労働時間)と同じ時間数となり、極めて危険です。

したがって、36協定を締結する際には、限度時間内での締結を基本に、仮に特別条項付き36協定を締結する場合でも、休日を含めても80時間には届かない時間数で締結すべきと考えます。

次回は、改正労働基準法をITエンジニアの長時間労働の是正に活かすためのポイントについて解説します。