まずは前回のおさらいから・・・。
「客先常駐の働き方」について聞いた結果から導き出されるポイントをまとめてみました。
1.客先常駐は、ITエンジニアの典型的な働き方である。
2.客先常駐先から、自社等へ持ちかえりが可能な案件は少ない。
3.客先常駐期間は2年以上となる場合が半数を超えている。
4.客先常駐者の自社への出社頻度は、月に1回以下が約7割である。
このような状況の中、企業は客先常駐者へどのような対応をしているのでしょうか。
管理監督者 企業規模100人未満で約3割、1000人以上で約5割が配置
はじめに客先常駐者に対する労働時間の管理を見てみましょう。
常駐先への自社の管理監督者の配置の有無にたずねた結果 が図表10のグラフになります。
「管理監督者が常駐している」は1000人以上では約5割、100人未満では約3割が配置している状況となっています。
「常駐していないし訪問も少ない」というケースを企業規模別にみると、300~999人規模、1000人以上規模では数%ですが、他方100人未満では約2割となっています。
時間外労働の管理が事前対応となっている企業は約6割
年次有給休暇の管理が事前対応となっている企業は約8割
では、客先常駐するエンジニアの労働時間はどのように管理されているか見てみましょう。
図表11のグラフは、管理者の対応について時間外労働への従事(上段)、年次有給休暇の申請(下段)の2つのケースについてたずねた結果です。
時間外労働への従事の場合、「常駐の管理監督者がその都度対応」が40.6%、常駐していなくても「自社の管理者が事前に対応」が20.7%となっており、時間外労働に従事する『都度』『事前』に対応といったケースが6割となっています。
管理監督者の対応は時間外労働に従事した『事後』となっているケースも「自社の管理監督者が事後にその都度対応」が14.3%、「自社の管理監督者が事後に概ね週単位でまとめて対応」が8.0%、「自社の管理監督者が事後に概ね月単位でまとめて対応 」が12.%と、珍しいケースとはいえず、『週単位』、『月単位』などのまとめて対応するケースも少なからずみられます。
年次有給休暇の申請のケースでは、「常駐の管理監督者がその都度対応」が39.0%、常駐していいなくても「自社の管理監督者が事前に対応」が41.0%となっており、 申請の『都度』『事前』に対応といったケースが8割と多数になっています。
時間外労働に事前に対応している企業では、月60時間を超える時間外労働が発生しにくい傾向
以上の労働時間の把握状況を踏まえつつ、次に客先常駐するエンジニアにおける長時間労働の有無とその対応状況について見てみましょう。
図表12の上段のグラフは、月60時間を超える時間外労働(長時間労働)の発生の有無と防止のための取り組み状況についてたずねたものです。月60時間超の時間外労働が「発生している」は54.2%と半数強を占めています。その内訳は「発生しており、防止に取り組んでいる」が50.2%であるのに対し、「発生しているが、(防止に)取り組めていない」は4.0%と少ない値になっています。ただし、「防止に取り組んでいる」 企業でも、実際には
月60時間超の時間外労働 が発生してしまっていることに留意する必要があります。
次に図表12の中段と下段のグラフを見てみましょう。このグラフは100人未満規模の企業に限定し、「事前」に時間外労働の確認等の対応したケースと(中段)と「事後」に対応したケース(下段)で見た結果を示しています。これによると、月60時間を超える時間外労働が「発生している」の比率は、「事後」が54.8%、「事前」が41.5%と、「事後」が13ポイント以上高くなっています。時間外労働の対応を「事後」に行う仕組みのもとでは、長時間労働がより発生しやすい(「事前」による対応は発生しにくい)、ということがうかがえるデータです。
調査結果によれば、管理監督者を常駐先に配置し、時間外労働の従事や休日申請への対応を「事前」に行うことが 、客先常駐の長時間労働の是正に一定の効果がある、と言えるのではないでしょうか。皆さんの職場における労働時間適正化の取り組みの参考となれば幸いです。