こんちは!中の人「1号」です!今回は、IT業界で導入率の高い「裁量労働制」について見ていきます!
「裁量労働制」で働く労働者の方が、労働時間が長い傾向
ITエンジニアを対象に、情報労連がNPO法人POSSEと共同実施した調査では、「裁量労働制」で働く労働者の方が、労働時間が長くなる傾向が分かりました。
「ITエンジニアの労働条件・労働移動に関する調査」(2015年4月~5月)
下記のグラフのとおり、制度が「適用されている」人の方が、1日の労働時間が「12時間」、および「13時間以上」の割合が、「適用なし」の人に比べて、約10ポイントずつ高くなっていることがわかります。
裁量や決定権に制度適用の有無は大きな差がない
そもそも裁量労働制(専門業務型裁量労働制)とは、
(1)業務の性質上その遂行方法を労働者の大幅な裁量に委ねる必要性があるため、
(2)業務遂行の手段および時間配分につき具体的指示をすることが困難な一定の専門的業務
に適用されるものです(労基法38条の3第1項)。
しかしながら、私たちの調査では、裁量労働制であろうがなかろうが、ITエンジニアの仕事の進め方における裁量や決定権について、大きな差が見られない、という結果が出ています。
案件数の増減を決められるかにも大きな差がない
一方、案件数の増減を決められるかどうか、または、業務量の増減を変えたりすることができるか、という点においても、両者の間に大きな差はありません。
さらにいえば、裁量労働制の人の4分の1は、業務量の増減をコントロールできない、と回答しています。
そして、「法定労働時間」の8時間を基準に自分の業務量を見たときの負担感を聞いたところ、裁量労働制の人は「法定労働時間を優に超える業務量である」との回答が最も多く、約4割を占めています。さらにいえば、裁量労働制でない人との間に、10ポイント以上の差がついていることもわかりました。
仕事の「量」に対する裁量がないから歯止めがきかない
つまり、
・仕事の「進め方」にたいする裁量はあっても、仕事の「量」にたいするそれは限定的なものである
・実際の業務量も、労働者が自身で時間配分を調整できる範囲にとどまらない
・一般的に適用される「法定労働時間」の枠がないため、裁量労働制の人の方が、そうでない人に比べて、長時間労働の傾向にあると推測できる。
ということになります。
裁量労働制で働く場合、たとえ法律どおりに運用され、時間配分や業務の進め方に関する決定権があったとしても、案件の量も案件の期限もコントロールは難しいですし、労働時間の規制がないがゆえに、長時間労働が発生しやすい環境下におかれやすいのです。
これをどう適切かつ適正に運用していくのか。次回は、実際に裁量労働制を導入している企業の運用実態を見ていきます。